訪日観光が本格的に回復するなか、日本のテーマパークは中国人観光客を中心としたインバウンド需要の大きな牽引役となっています。
特に、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンや東京ディズニーリゾートは、世界的ブランドの信頼性に加え、日本ならではの「高品質な運営」「清潔さ」「安全性」が評価されています。また、「日本限定の公式IP体験」も再訪を促す大きな要因となっています。
こうした背景から、日本のテーマパークは単なる観光スポットを超え、中国人観光客にとって“体験の目的地”として特別な地位を確立しつつあります。
中華圏に特化したデジタルマーケティング事業を展開する株式会社unbotは、激動する訪日インバウンド市場の最新動向を関連業界の皆様に継続してお届けしてまいります。
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▼目次
01.なぜ今、日本のテーマパークが注目されるのか?
02.USJとTDRの入場者数と外国人観光客の割合
03.中国人訪日客が日本のテーマパークに強く惹かれる理由とは?
04.小紅書(RED)における投稿分析について
05.まとめ
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● 世界的テーマパークの魅力と日本品質
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンや東京ディズニーリゾートは、世界的ブランドとしての信頼性に加え、「接客の丁寧さ」「清潔さ」「時間通りの運営」といった日本ならではの強みを持っています。アトラクションの待ち時間管理やトラブル対応においても、日本独自の高品質なオペレーションが実現されています。
● “日本限定のIP体験”の強さ
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「スーパー・ニンテンドー・ワールド」や東京ディズニーリゾートの「ファンタジースプリングス」など、日本オリジナルの公式IPエリアは“ここでしか味わえない体験”として話題性が高く、訪日の動機となっています。
● SNS映えとトレンド性
フォトスポットの豊富さや、キャラクターグッズ・季節イベントの企画力の高さも大きな魅力です。特に若い世代の観光客は「日本旅行の思い出をSNSで共有すること」を重視しており、パーク内での写真撮影や限定フードはそのニーズにぴったり合致しています。
● 日本文化との融合
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは常に短期的なコラボアトラクションで話題性をキープしています。アニメ・ゲームとのコラボなど「日本らしさ」を感じられる要素も外国人観光客を魅了します。単なる海外ブランドのコピーではなく、「日本オリジナル」を組み合わせた施設運営が支持を得ています。
米テーマエンターテインメント協会(TEA)の発表によると、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは2023年に約1,600万人を集客し、前年比で約30%の増加を記録しました。当社調査では、来場者の約15%が外国人と推定され、その中でも中国人観光客の増加が目立っています。
また、株式会社オリエンタルランドの決算資料によれば、東京ディズニーリゾートの2024年来場者数は2,756万人で、前年からの増加は5万人(0.2%)にとどまりました。
一方で注目すべきは、入園者数に占める海外ゲスト数の比率です。2024年3月期には12.7%だったのに対し、2025年3月期には15.3%へと上昇。全体の来場者数がほぼ横ばいである中で、インバウンド需要が確実に拡大していることが明らかになっています。
1. “公式IP体験”の価値
任天堂、ポケモン、ジブリ、ドラえもんなど、中国でも人気の日本コンテンツを 公式施設でリアルに体験できることが大きな魅力です。世界観を忠実に再現したエリアは、まさに“聖地巡礼先”としての価値を持ち、多くの観光客が訪れる理由になっています。
2. 安心・快適な旅行体験
日本のテーマパークは、清潔で安全な環境が整備されており、特に子連れや三世代旅行の中国人観光客にとっては大きな魅力となっています。例えば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、エクスプレス・パスや整理券のシステムが導入されており、効率的な運営が実現されています。これにより、混雑を避けて快適に過ごすことができ、家族全員が楽しめる環境が提供されています。
3. “今だけ・ここだけ”の話題性
テーマパークの 新エリアや季節イベント は、「今行くべき理由」を明確化します。例えば、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、季節限定のイベントや新しいアトラクションが頻繁に導入されており、これらは中国人観光客にとって「今行かないと損」という強い動機付けとなります。SNSや口コミで情報が拡散されやすく、さらに集客を加速する効果があります。
4. SNSとの親和性
小紅書(RED)や抖音(Douyin)での投稿文化と親和性が高く、写真映え・動画映えするアトラクションやイベント は若い世代の動機付けに直結します。投稿が話題になることで、施設の人気がさらに高まります。
5. 体験志向と消費行動の好循環
“日本でしか買えないお土産 × 圧倒的な安全・楽しさの体験” が、中国人観光客のリピーター化と滞在満足度向上を支えています。かつての「ショッピング中心」の旅行から、家族や友人と楽しむ体験型旅行へとシフトしている点も、テーマパーク人気の背景です。
投稿数の差が生まれる主な理由
1. ターゲット層とコンテンツの特性
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(任天堂ワールド、ハリー・ポッター)のアトラクションは、視覚的インパクトや話題性、「打卡」(写真スポットで記念撮影)の要素が強く、小紅書(RED)で共有しやすい。
2. 攻略需要の高さ
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンはエクスプレス・パスや整理券、VIP エクスペリエンスなどのルールが複雑で、訪れる前に「攻略法」を求める需要が非常に高く、これが投稿総数を押し上げている。
3. 季節限定イベント
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンはパレードやハロウィンのホラーイベントなど、定期的に話題の中心となるイベントがあり、新しいコンテンツが常に生まれている。
4. 東京ディズニーリゾートの位置付け
東京ディズニーリゾートは、幻想的で温かい雰囲気作りに重点を置いている。コアなファンは忠実度が高いが、投稿内容は「可愛い」「プリンセス」「グルメ」「感動体験の記録」に偏る傾向があり、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンほど爆発的に拡散する力は弱め。
小紅書(RED)上では、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは「パーク完全攻略」、東京ディズニーリゾートは「夢に浸る場所」として、それぞれの位置づけを確立しています。体験の違いが投稿数やスタイルに反映され、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは「攻略ニーズ」の高さから投稿数で優位に立っていると考えられます。
日本のテーマパークは、世界的ブランドの信頼と日本独自の運営品質を基盤に、中国人観光客から圧倒的な支持を集めています。特に「日本でしか体験できない公式IP」「安心・快適な環境」「SNSと親和性の高い演出」「限定イベントによる話題性」は、中国人旅行者のニーズと合致し、訪日の大きな動機付けとなっています。
さらに、小紅書(RED)などのSNS分析からも明らかなように、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンと東京ディズニーリゾートはそれぞれのポジショニングで人気を確立。異なる魅力で中国人観光客を惹きつけている点は、日本市場の強みでもあります。
今後、インバウンド需要の拡大とともに、これらのテーマパークは「訪日旅行の中心」としてますます存在感を高めていくと考えられます。
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